ロレックスの「チェリーニ」というモデルをご存知でしょうか。
現在ではラインアップされていないこともあり馴染みがないという方も多いかもしれませんが、100年以上に渡るロレックスの歴史において是非とも覚えておいていただきたい名称の一つです。
それというのも資金面においてロレックスが充分でなかった時期を支えたモデルでもあったからです。
この記事では、「チェリーニ」が誕生した頃のお話をご紹介いたします。
2024.06.07
ロレックスの「チェリーニ」というモデルをご存知でしょうか。
現在ではラインアップされていないこともあり馴染みがないという方も多いかもしれませんが、100年以上に渡るロレックスの歴史において是非とも覚えておいていただきたい名称の一つです。
それというのも資金面においてロレックスが充分でなかった時期を支えたモデルでもあったからです。
この記事では、「チェリーニ」が誕生した頃のお話をご紹介いたします。
現在ではロレックスの代名詞として定着している「オイスターケース」を1926年に、世界初の自動巻き機構「パーペチュアルローター」を1931年に完成させたハンス・ウイルスドルフ(ロレックス創業者)。
ただこの革新的な技術は、世間一般に瞬く間に広がったかと言うたと言うとそうではありませんでした。
1933年時点でのオイスターモデルの販売数はたった1万本前後と、順風満帆のスタートとは言いがたい状況だったのです。
そのような中、ロレックスの資金面を支えていたのは非オイスターケースモデルである「チェリーニ プリンス」や1926年からはじめたディフュージョンブランドの「チューダー」の時計でした。
イタリア・ルネッサンス期の彫金彫刻家でありエレガントな作品を数多く輩出していた「ベンヴェヌート・チェッリーニ(Benvenuto Cellini)」の名を引用したとされる「チェリーニ」に登場したのは1928年のこと。
その初代モデルである「プリンス」は当時最先端の装飾美術として周知されていたアールデコ様式のデザインが美しいものを身に着ける習慣を持つ英国紳士の間で受け入れられ、腕時計が普及するきっかけとなったとも言われています。
「チェリーニ プリンス」は特徴的な縦長のケースデザインを持ち、時分計と秒計が上下で離別したレイアウトとなっていました。
このセパレートした秒計が患者の脈拍計測を行うのに便利だと医師にも広がっていき、重宝されていたことから「ドクターズウォッチ」とも呼ばれていました。
また、「チェリーニ プリンス」は誕生当初のカタログを見ると他のロレックスの時計よりも約1割ほど高いモデルとなっています。
当時、腕時計は庶民にはなかなか手の出ない高級品でしたが、その中でも「チェリーニ プリンス」はプレステージ性の高い時計として位置していました。
この状況を変えるきっかけは、1945年の「デイトジャスト」の登場です。
画像出典元:ロレックス公式
「デイトジャスト」は、ロレックス創業者のハンス・ウイルスドルフが、
「カメラのシャッターは1/10秒でも動く。カメラも腕時計も同じ機械だから、カメラのシャッターのように瞬間的に日付けを切り替えられる機構を作りたい」
と、技術者に提案し、午前0時に瞬時に日付けが切り替わる機能(ジャストチェンジ)を目指したことから名前が付いたと言われています。
「デイトジャスト」の開発の成功についてハンス・ウイルスドルフは「これはもう、時計科学の傑作であるとしか言いようがない。これまでの発見がすべて凝縮されている」とコメントしています。
この「デイトジャスト」はその機構自体、当時として画期的なことでしたが、功績はそれだけではありません。
左手首に着けたときに日付けを袖口から確認しやすいようにと3時位置の小窓に表示させ、紳士用腕時計の新たなスタイルを確立したのです。
ダイアルの小窓に日付を表示する初の自動巻腕時計である「デイトジャスト」は、デザイン面でも新しいスタイルを築いたモデルです。
ダイヤルの小窓の他にもジュビリー(Jubilee)ブレスレットを採用し、フルーテッドベゼルとの組み合わせは「オイスター」の象徴的なデザインとして現在も引き継がれています。
この「デイトジャスト」の登場により、ロレックスの三大発明と呼ばれる「オイスターケース」「パーペチュアル」「デイトジャスト」が揃い、高性能腕時計の最先端を突き進むロレックスの存在は幅広く周知されていたこともあり、ドレスウォッチとしてビジネスを支える大役を担った「チェリーニ」は幕を下ろしたのです。
しかし、「チェリーニ」の人気は根強く、2005年、ロレックス創業100周年を記念モデルとして、「チェリーニ プリンス」は復活を遂げ話題を集めました。
また、2014年には丸型ケースで自動巻きムーブメントを備えた「チェリーニ」が登場したことは記憶に新しい出来事です。
この他にも時計専門オークションハウス、アンティコルム 社による2005年、2006年のオークションでは、1930年代製の「チェリーニプリンス」が約230万円という高値で落札されるほどコレクター唾涎の的となっています。
2024年現在のラインアップでは「チェリーニ」は名を連ねていませんが、クラシカルなデザインにドレッシーな装飾が加えられた「チェリーニ」は歴代ロレックスの中でも特別な存在感を有しているモデルなのです。
1930年創業。年間修理実績10万本以上。 わたしたちは時計修理業界のリーディングカンパニーです。
弊社は時計修理一筋90年以上の不器用な会社ですが、これまで多数の有名百貨店や時計店とお取引をしており、ビックカメラさんやヨドバシカメラさんといった大手家電量販店の時計修理コーナーの運営も担っています。
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晋遊舎「ロレックス大全 the BEST」,晋遊舎,2022年6月
世界文化社「別冊Begin ロレックス チェリーニ プリンス」,世界文化社,2006年6月