ロレックスが「デイトナ」を発表したのは、1963年のことでした。当時、フロリダ州のデイトナ・ビーチはモータースポーツの聖地として急速にその地位を確立していました。この場所にインスパイアされたロレックスは、タキメータースケールをベゼルに配置し、レーサーが速度計算を容易に行える機能を持つ「コスモグラフ デイトナ」を開発しました。このモデルは、プロフェッショナルから愛されると同時に、一般の時計愛好家からも注目を集める結果となりました。

▶初期モデルの特徴 ― プレ・デイトナからアイコンへ
デイトナの初期モデルには、ポンプ型プッシャーが採用されていました。1960年代末になると、ねじ込み式プッシャーが導入され、防水性能が大幅に向上しました。また、「DAYTONA」の文字が文字盤上で徐々に目立つようになり、最終的には中央のサブダイアル上に赤い弧を描くデザインに進化しました。

特筆すべきは「ポール・ニューマン・デイトナ」として知られるモデルです。この時計は俳優ポール・ニューマンが愛用したことで有名で、特徴的な「エキゾチックダイアル」が採用されています。当時は販売不振でしたが、現在ではオークションで数億円の値が付くこともある希少価値の高いアイテムです。ニューマンが妻ジョアン・ウッドワードから贈られたモデルの裏蓋には、「DRIVE CAREFULLY ME（安全運転してね）」と刻印されており、時計史に残る逸話として知られています。

▶ゼニス デイトナ ― 自動巻きへの進化
1988年、デイトナは新たな進化を遂げます。この時期に登場した「ゼニス デイトナ」として知られるモデルには、ゼニス社製のムーブメント「エル・プリメロ」を改良した「キャリバー4030」が搭載されました。このムーブメントは、当時の機械式時計としては最高峰の性能を持ち、クロノグラフ秒針の位置が「9時」に配置されている点が特徴的です。

ゼニス デイトナは、信頼性の高いムーブメントを備えると同時に、スポーティーで洗練されたデザインにより、デイトナの新たなアイコンとして時計ファンに愛されました。

▶2000年代以降 ― 自社製ムーブメント「キャリバー4130」
2000年、ロレックスは「キャリバー4130」を搭載したデイトナを発表しました。このムーブメントは、それまでのゼニス製からロレックス独自の設計に切り替わったもので、部品点数を削減し、信頼性、耐久性、そして精度をさらに向上させました。また、パワーリザーブが約72時間に延長され、実用性が一層高まりました。

外装面でも改良が施され、ケースサイズや素材のバリエーションが拡大。特にステンレススチールモデルは、手頃な価格ながら高品質を提供するモデルとして非常に高い人気を誇っています。

デイトナは、クロノグラフ機能を搭載したロレックスのスポーティなモデルです。高い精度を保つためには、内部のムーブメントやクロノグラフ機構の定期的なメンテナンスが必要です。潤滑油の劣化やパッキンの老化により、摩耗や防水性能の低下が発生する可能性があります。これらを防ぐためにオーバーホールが必要です。

デイトナのオーバーホールは3〜5年に1度が推奨されます。また、防水性能を保つために1年に一度の防水検査を行うことで、最適なコンディションを維持できます。普段からクロノグラフ機能を頻繁に使用する場合は、より短いスパンでのメンテナンスを検討してください。
また、適切なタイミングは使用状況や保存環境によって異なりますので、普段と異なる動作や精度のズレがあれば、早めに点検を依頼しましょう。